札幌地方裁判所 昭和24年(ヨ)92号 判決 1949年8月25日
申請人
瀧川化学工業株式会社労働組合
右代表者
執行委員長
被申請人
瀧川化学工業株式会社
主文
本件仮処分の申請は之を却下する。
申請の費用は申請人の負担とする。
申請の趣旨
申請代理人は、被申請人は本案訴訟の判決が確定する迄
(一) 申請人組合員に対する解雇の申入れ、職場の変更、職分の変更をしてはならない。
(二) 申請人以外の労働組合を認め之を団体交渉の相手方としてはならない。
との旨の仮処分判決を求める。
事実
申請人組合は被申請人会社の従業員で組織する法人たる労働組合で、昭和二十二年十月二日被申請人会社との間に労働協約を締結した。
而して右協約第三十一条には協約の有効期間は協約締結の日から昭和二十三年六月四日迄とする。会社又は組合から期間満了一ケ月前変更の申出がなければ更に一ケ年自動的に継続有効となると所謂期間更新の規定をなし更に変更の意志表示がなされても新協約が成立する迄は本協約は有効である旨を定め、更にその第十四条には会社は従業員の採用解雇、職場変更、職分変更に関する事項等については予め組合の同意を得て実施する旨を規定した。
而して被申請人は昭和二十四年四月十日申請人に対し、会計自立の方法として従業員合計三百六十三名の整理案に関し団体交渉の請入れをなし交渉に入つたが、申請人としては人員整理をしないでも生産計画を合理化することによつて、会社の自立が可能であることを確信していたので、その点を主張し被申請人の人員整理案に反対したが、被申請人は人員整理を強行することのみに熱中し遂に申請人の主張を容れず昭和二十四年六月四日申請人に対し同日を以て、申請人、被申請人間の労働協約は期間満了により失効した旨の申入をなし次で同月二十九日組合員三百六十三名の解雇を宣言し、解雇を承認しない者には、退職金を支払わない旨を通知して申請人組合を脅かしたので申請人も涙を呑んで右解雇の点についてのみ同意を与えた。ところが会社は右解雇に続き従業員の職場並に職分の変更を実施し申請人に対しては唯その旨通知をなしたのみならず、今後も第二次人員整理を実施する処が多分にあるのである。
更に被申請人は右のように本件労働協約が失効したと称し、労働協約第二条の会社は申請人組合を社員中の唯一の団体交渉の相手方と認めるという規定を無視して最近申請人組合の一部脱退者によつて結成された第二組合と、失業対策及賃金問題について、団体交渉をなしつつある。
然しながら申請人は本件労働協約は被申請人の主張如何に拘らず、現在も尚有効に存続しているものと信ずる。本件労働協約は去る昭和二十三年五月三日当初の協約期間満了一ケ月前に、当事者双方から協約変更の意思ある旨が互に通告されたのであるが、その後約一ケ年間新協約改定に関する具体的交渉は何等行われない侭に経過し、その間双方共改定については、何等の通告をもなすことなく、昭和二十四年六月四日に迄立至つたものである。従つて昨昭和二十三年五月三日の協約変更の意思がある旨の通告は当事者双方とも、暗黙の内に取消したものと見るべきであるから、本件協約は第一次的には昭和二十四年六月四日迄、更に第二次的に昭和二十五年六月四日迄何れも協約第三十一条第二項の規定によつて、順次更新され有効に存続するものとしなければならない。若し仮に、昭和二十三年五月三日の協約変更の通告は取消されたものではないとすれば例協約第三十一条第三項の規定により、新協約成立迄は、本協約は今尚有効に存続するものと云わねばならない。何となれば、右規定に所謂「新協約が成立する迄」というのは、一種の期限を定めたものと解すべきであるから、改正労働組合法第十五条第二項本文には該当しないからである。従つて新協約が成立しない以上同条第一項に定める協約の有効期間たる三年間即ち本件労働協約においては、昭和二十五年十月二日迄は右協約は有効に存続するものと云うことができよう。
右のように申請人はすくなくとも、本協約は昭和二十五年六月四日迄は有効に存続することを確信しているのであるが、被申請人は之を争つているので、申請人は昭和二十四年七月九日札幌地方裁判所に、右労働協約存立確認の訴訟を提起したのであるが、被申請人は前記のように、申請人組合に対する諸措置を強行し来つているので申請人は右のような急迫な強暴及その蒙る著しい損害を避ける為、本件仮処分の申請を為した次第であると陳述し、被申請人が昭和二十四年六月二十七日協約存続の意思のない旨を申請人に対し表示した事実は認めると附陳した。(疎明省略)
被申請人代理人は申請却下の裁判を求め答弁として、
申請人代理人の主張する事実中申請人被申請人間に昭和二十二年六月五日申請人主強のような内容を有する労働協約が締結され、その後昭和二十三年五月三日当事者双方から、協約変更の意思ある旨を表示した事実昭和二十四年四月十日被申請人が、申請人組合に対し、その組合員合計三百六十三名の整理に関し、団体交渉を申入れ以来団体交渉を為した事実、同年六月四日申請人に対し、右労働協約は期間満了によつて失効した旨を申入れ、更に同月二十九日右整理人員中の退職希望者を除く百九十三名に対し、各個に解雇の通知を発し、右解雇に伴う従業員の職場及職分の各変更を為した事実及被申請人会社の一部従業員により第二組合が結成された事実は認めるが、その余の事実はすべて否認する。
申請人は右人員整理については、組合大会の決議に基いてすべて之に同意し、退職に関する給与の授受を為して整理を完了したものであつて、申請人主張のように被申請人において、退職金不払を以て申請人の組合員を脅かしたというような事実はないのみならず、被申請人は今後第二次整理を行う意思は全くなく、今回の整理に際しても申請人組合に対し、しばしばその旨言明して之を徹底させてあるのである、又職場及職分の変更は右人員整理の当初から予期されていた当然の結果であつて、謂わば右整理と表裏一体の関係にあるところ、申請人は前述のように本件人員整理に同意したのであるから右変更についても当然同意があつたものと云わねばならない。
次に第二組合に関しては、被申請人会社は之迄第二組合と話合はしたことはあるが、未だ正式の団体交渉を持つた事実はない。而して申請人は申請の趣旨第二項についての理由として、労働協約第二条の規定を主張するが、既に第二組合が結成された以上右組合が当然被申請人会社と団体交渉権を獲得することは、我が労働法が禁じていないばかりでなく、改正労働組合法は、使用者が労働者の代表者と団体交渉することを正当な理由がなくて拒むことを、不当労働行為としているのであつて、右規定は強行法規たる性質を有するのであるから申請人主張の協約第二条の規定は、当然効力を失つたものと、解さねばならない。
そもそも申請人は本件仮処分を求める理由の基礎として、本件労働協約が少くとも昭和二十五年六月四日迄は有効に存続すると主張するけれども、次の理由によつて右労働協約は昭和二十四年六月四日の経過によつて失効したものである。
即ち右協効第三十一条には、その第一項で協約存続の基本期間を定め第二項には協約変更の意思表示がなかつた場合、一ケ年の延長期間を、第三項にはその意思表示があつた場合、新協約が成立する迄夫々協約が有効であることを定め、右両規定とも第一項を補充するものと解するのを正当とするから、同条第二項の所謂自動延長期間は飽く迄も、一年の補充期間であつて基本期間ではなく、唯協約の効力存続の面において、基本期間と同様の作用を為すに過ぎない。
従つて第二項の延長期間満了一ケ月前に重ねて変更の意思表示がなかつたとしても、更に一年間自動延長する筋合ではない。同条第三項は第二項と異つて自動延長の期間を定めたものではなく、同条第一項の基本期間満了に因つて協約は失効するが、無協約事態を生するのを避ける為の暫定措置として、新協約の成立する迄協約を有効とする擬制を約定したものと解すべきである。而して右の新協約成立する迄というのは協約の基本期間満了後一年を、最長期と解すべきである。本件においては当事者は前記のように相互に昭和二十三年五月三日基本期間満了一ケ月前協約変更の意思表示をなしたに拘らず、新協約が成立しなかつたのであるから遅くとも、昭和二十四年六月四日の満了によつて協約は失効したものと云うべきであり、仮に右変更の意思表示が暗黙に取消されたものとみれば、最初から変更の意思表示がなかつたこととなつて、同条第二項が適用されることとなり此の場合も協約は前同様昭和二十四年六月四日の満了によつて失効したものとしなければならない。又昭和二十三年五月三日の意思表示が今尚効力を有するものとし、新協約成立する迄は、本件協約が有効に存続しているとしても、被申請人会社は、申請人に対し、本協約の期限後(即第三十一条第一項の基本期間一年の満了後)たる、昭和二十四年六月四日協約の存続を欲しない意思を表示し重ねて、同月二十七日協約を存続させる意思のないことを表示したのであるから、本件協約は改正労働組合法第十五条第二項によつて既に失効したものである。
次に本件労働協約は人事権その他経営権について、申請人主張のように重大な制限を約する条項を含み企業三原則並に、経済安定九原則の実行等の現下の経済情勢に即した企業の再建整備の実行の為には、右よのうな協約を変更することを正当とするに拘らず、申請人は被申請人の度々の協約変更の申入れを拒否して、協約の存続を主張し、本件仮処分の申請に迄及んでいる現状にあるのであるから被申請人は申請人に対し、茲に本件口頭弁論において、右協約の解除の意思表示をする。
右の理由によつて、本件労働協約は何れの点から見ても、既にその効力を失つたものとしなければならない。
以上何れの点から見ても、申請人主張の被申請人会社の前記諸措置は正当であつて、急迫なる強暴でもなければ右措置により被申請人組合が恢復し得ない損害を蒙るものでもないから申請人の本件仮処分の申請はすべてその理由がないものであると陳述した。(疎明省略)
理由
先づ本件労働協約の効力の存否について考えて見るのに、本件当事者間に労働協約が締結され、その後昭和二十三年五月三日当事者双方から協約変更の意思表示が為されたが、新協約改定に至らないままに経過していたところ昭和二十四年六月四日被申請人は申請人に対し、右協約が期間満了によつて失効した旨を申入れた事実、及右協約内容については、当事者間に争がなく、唯協約の締結日について当事者間の主張に若干の相違が認められるのであるが、申請人の主張自体及証人藤井春吉の証言によつて、右の日が昭和二十二年六月四日であることは容易に断定し得るところである。而して右協約の継続期間に関しては、協力三十一条に、「本協約の有効期間は締結の日より向う一ケ年とす、会社又は組合より期間満了一ケ月前変更の申出がなければ、更に一ケ年自動的に継続有効となる変更の意思表示がなされても、新協約が成立する迄は本協約は有効である」との規定があることは成立に争のない甲第一号証によつて明かなところ、証人藤井春吉の供述によれば、昭和二十三年五月三日協約変更の意思表示が為された当時、之に関して一回も具体的協議を行わず其の後当事者双方何れも、協約変更についての積極的な態度を示すことなく推移した事実を認め得るのであつて、このような場合両当事者間ともさきに為した、協約変更の意思表示を暗黙の裡に取消したものと認定するのが相当である。従つて当初の労働協約は、前記第三十一条第二項の規定に基き、昭和二十三年六月五日以降一年間更新有効となつたものであるが、此の間においても当事者間においては、何等協約変更の意思表示が為されなかつたことは、当事者間に争がないので、右協約は前記条項の適用により更に向う一ケ年の期間を以て更新されたものとしなければならない。被申請人は第三十一条第二項第三項は何れも同条第一項の補充的規定であつて当事者間において、協約変更の意思表示が為されなか否かにかかわらず、基本有効期間を最大限一ケ年間だけ延長するに過ぎず一ケ年延長後更に一ケ年更新することを規定したものではないとし然らずとするも、被申請人は申請人に対し、本協約の期限後たる昭和二十四年六月四日協約の存続を欲しない旨の意思表示をなし、重ねて同年同月二十四日右協約を存続させる意思のないことを表示したのであるから、改正労組法第十五条第二項によつて、失効したと主張するのであるが、第三十一条第二項の規定の趣旨は協約期間中満了一ケ月前迄に当事者の一方から協約変更の申出がない場合には(本件認定のように変更の意思表示が取消された場合も同様)協約が、一年間更新されること且右更新は、唯一回のみに限られているものではない、ことは同条項の文言の解釈上明であつて、成立に争のない乙第一号証の一乃至三同第二号証の一、二は申請人組合も、早晩右協約改正の必要なることを自覚していた事実を認め得る資料たるに止まり、被申請人の主張事実を疏明するには未だ不十分であり、証人家木為則の供述も右文言についての前記解釈を覆すに足りない。すでに右認定のように、本件労働協約が右更新規定により、昭和二十四年六月四日以降更に一ケ年有効となつた以上、その後被申請人において協約の存続を欲しない旨の意思表示が為されたにしても、改正労組法十五条第二項本文の規定が適用されるものでないことは同条項但し書に「この規定は労働協約の当事者のいづれか一方が反対の意志を表示しない限り労働協約の効力が更新される旨の労働協約の規定を排除する趣旨に解釈されてはならない」と定められていることにより疑のないところである。
次に被申請人の解除権行使によつて、本件労働協約が失効したかどうかについては、前記第一号証により右協約の四、人事並に機構に関する事項中には第十四条に「会社は人事に関する左記事項は予め組合の同意を得て実施する。(一)従業員の採用解雇に関する事項。(二)従業員の昇滅給、転勤職場変更職分変更昇進等に関する事項。(三)従業員の賞罰に関する事項」とあり第十八条に「会社は事業の縮少職場閉鎖其の他従業員の一身上の重大な影響を及ぼす経営上の改題に就ては予め組合に通知し、両者協議の上善後策を樹てる」とあり、第十九条には「会社は機構職制の改廃に関し組合の同意なくして之を行はない」との規定を設けていることは明であるが、右のような、組合の経営参加的諸規定が存すること自体を捉えて直ちに企業三原則並に経済安定九原則に即した被申請人会社の企業の再建整備の実行を阻む不法な労働協約であるとして之を、一方的に解除し得るとすることは、正当ではない。即ち労働協約中に右のような規定が存することにより直ちに労働組合が之を固執して経営の合理化を阻害する態度に出るものと即断することは、些か早計に失するのであつて、いやしくも労資双方が合意の下に締結された、協約を使用者側において一方的に解除し得るとする為には、相手方たる労働組合が経済民主化の線を逸脱して、右のような条項を楯として日本経済の現状を無視し企業の実態に対して殊更に目を蔽い、その権利を濫用して、現実に会社の企業再建の為に重大な支障を与えているという非協力的態度がその組合に認め得るだけの、具体的な資料が存しない限り当該労働協約を全面的に解除し得ると断定することはできない。而して本件被申請人主張の申請人組合が協約存続を主張して、本件仮処分の申請に及んでいるという一事を以てしては未だ以て右資料と為すには不十分であり又被申請人が主張する申請人組合が、被申請人の協約変更の申入れを拒否しているという事実は、被申請人の全疏明方法を以てしても之を認め得ないところである。特に後に説示するように、申請人組合が今次申請人会社の企業整備の為の多数組合員の人員整理について、同意を為したという被申請人の自認している事実の存することは右認定を支持する一の資料を与えるものと云うことができる。
右のように本件労働協約は昭和二十五年六月四日迄有効であると認定するのであるが、進んで申請人の申請の趣旨第一項の点について判断するのに、被申請人会社が昭和二十四年四月十日申請人組合に対し、その組合員三百六十三名の整理に関し団体交渉を申入れ、その団体交渉を為したが、纏らず同月二十九日被申請人が退職希望者を除く百九十三名の者に対し解雇の通知を発し右解雇に件う従業員の職場及職分の変更を為した事実は当事者間に争ない、申請人は被申請人が右団体交渉の中途において、解雇者の退職金不払の通知を為して申請人を脅かしたので、右人員の点についてのみ同意したのであつて之に件う従業員の職場並に職分の変更を実施するにあたつては、申請人に対し協議の申入れはなく従つて同意を与えていない旨主張するのであるが、成立に争のない乙第五号の一乃至三乙第六第七号証の各一、二に証人家本為則の供述を綜合すれば、申請人は昭和二十四年六月二十九日前記人員整理に関する被申請会社案を全面的に受諾した事実を認定するに十分であつて、成立に争ない乙第十四乃至第十七号証は右認定に何等影響を与うるものでない。既に右認定のように申請人組合が右人員整理に同意を与えた以上、その結果当然行われねばならない、従業員の職場並に職分の変更についても、亦同意したものと解すべきことは事理当然の結論であつて、此の点について右判断に反する申請人の主張は到底之を認容するわけにいかない。而して被申請人は本件口頭弁論において、第二次人員整理は今後絶対に之をしない旨を主張し、成立に争のない乙第三号証第四号証も右主張事実を認めるに十分であるから、申請人の申請第一項の点は仮処分を為す必要がないものと断定しなければならない。
最後に申請人の申請の第二項について考えてみるに、被申請人は第二組合とは単に話合を為したに過ぎず未だ団体交渉を持つた事実はないと主張するのであるが、既に被申請人会社従業員の一部によつて、第二組合が結成されていることは当事者間に争がなく、又被申請人の自認するように、第二組合との間に団体的に話合が為されている以上、延いて団体交渉が行われる可能性現実性は多分に存するのであるから、結局申請人主張の被申請人は第二組合と団体交渉を為し得ないかどうかを判断するの必要があることとなるのである。本件労働協約第二条に、「会社は組合を社員中における唯一の団体交渉の相手方と認める」と規定していることは当事者間に争なく、右は被申請人会社に申請人組合以外のものと団体交渉を為し得ない協約上の債務を負担せしめていることを明にしたものに外ならない。然しながらかかる規定は、労働法上一労働組合に所謂「排他的な適正単位」認めをる法制の下においては、重要な意義を認め得るのであるが、我が労働法におけるようにかかる制度を採用していない法制下においてはその法的拘束力が殆んど意義を有し得ないと解すべきであるのみならず、改正労働組合法第七条は所謂使用者の不当労働行為禁止の規定を拡充整備し、その第二号には「使用者の雇用する労働者の代表者と団体交渉することを正当な理由がなくて拒むこと」と云う規定を設け、之に反する使用者の不当労働行為に対すする制裁として状定の場合に行政罰、又は刑罰の規定を以て臨むこととしたのである。而して右規定の趣旨とするところは団体交渉権のある団体としては、当該使用者に対し唯一の労働組合たると否と又労働組合を結成していることをすら必要としないと解するのを正当とする。果して然らば、本件労働協約第二条によつて負担する被申請人の前記債務は右改正労組法の限度において、制限されるものと解するの外はなく、本協約第二条が被申請人に対し、不当労働行為を敢行して迄その債務を強制するものと為し得ないことは勿論、協約第二条の規定が改正労組法第七条第二号の適用を当然排除すると解することも正当でない、従つて協約第二条は、改正労組法第七条第二号の適用の限度において、その効力を失うものと解するのが相当である。而して我が労働法上第二組合の結成に関しては、労資当事者間に協約上クローズド・ショップ乃至ユニオン・ショップ約款の存する場合を除き、何等制限がない事は明らかであるから、かかる協約を持たない本件当事者間において、申請人組合が被申請人に対し、申請人以外の労働組合を認め、之を団体交渉の相手方としてはならないとの要求は、之を為し得ないとしなければならない。
以上の理由によつて、申請人申請の第一項の仮処分請求は仮処分の必要がないものであり、同第二項はその理由がないことに帰するので、申請人の本件仮処分申請はすべて之を却下すべきものとし、申請費用について、民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決した。